「伴走型モデル創出プロジェクト」採択事業者10社による成果報告会を開催しました!

選抜されたDX宣言事業者がパートナー事業者との共創によりDXに挑戦し、県内事業者の参考となるモデル事例を創出する「伴走型モデル創出プロジェクト」。

各社、「ありたい姿」の実現に向けて、10月の始動から5か月間にわたり、パートナーとともに走り抜けてまいりました。

この度2023年3月16日(木)に、モデル事業者10社が、自社の課題と未来に本気で向き合った挑戦と成果を県内の皆様にご覧いただく成果報告会を開催いたしました。現地及びオンラインで約100名の方にご参加いただき、盛況のうちに終了しました!

こちらでは、各社の発表の一部をご紹介いたします。

採択事業者10社による成果報告

株式会社ありたや

「想像を超える住環境をお客様に提供する」をビジョンに掲げる株式会社ありたや。

トイレやお風呂、キッチンなど住設商品を取り扱っている専門商社であるが、当社は「モノを売る商社」から「空間を提案する商社」になるべく、取扱メーカー・商品の幅を積極的に広げてきた。その結果、業務量の増加や業務の複雑化によって、業務時間が長期化するという問題に直面していた。

そこで、受注から納入までの業務フローにRPAを導入。注文を受けてから納品書を作成するまでの業務を自動化した結果、営業1人あたり1日65分の業務量の削減を実現した。また、クラウド型の共有フォルダの導入や、FAXの電子化も含めると、月350時間の削減、人に換算すると2人分以上の業務時間の削減を達成した。

今後は、業務効率化・事業拡大・サービス向上の3つを軸にしながら取り組みを継続、ありたやの最大の強みである「人」の力を最大限発揮し、社員が誇れるような会社を目指していく。

 

株式会社いろは建築技巧

「次世代を担う若手職人たちが、安心して一流の大工になれる会社をつくりたい」をビジョンに掲げる株式会社いろは建築技巧。

建築業界では、弟子が師匠の技術を「見て、やって、覚える」という考え方が強く、経験や勘に頼った教育方法であるため、担い手が育ちにくいという業界の構造上の問題が存在していた。

そこで当社は、ウェアラブルカメラで撮影した職人の作業映像を編集し、Off-JT(集合研修)を開催。ノウハウを共有し、短期間で技術を継承できる仕組みづくりを行ってきた。

撮影を通して新たな発見もあった。金づちを使う手に伝わる感触や、カンナの刃を調整している時の音の微妙な違い、これらに視覚が合わさり職人の手になっていたのだ。これらを可視化することが理解度に大きな影響を与えることから、今後は更に精度を上げるとともに、短編動画・伝承動画・教育の実践を通じて、PDCAサイクルを回していき、若手の職人が安心して学習できる仕組みをつくっていく。

 

有限会社榎屋

「自由度と地域性の高い観光施設DX」をビジョンに掲げる有限会社榎屋。

由布院で12室の小規模旅館を経営しているが、従来のチェックインから食事、お風呂、睡眠、食事、チェックアウトという決められたサービスではバリエーションが不足し、海外の方や様々な宿泊形態のニーズに対応できないと考えた。

そのため、お風呂やお食事処の空き状況や地域のアクティビティの情報がタブレット上で一目でわかるようなシステムを導入。

導入にあたっては、由布院らしい柔らかい見た目と感覚的な操作性にこだわった。

これにより、お客様にもスタッフにも、無駄な確認がゼロの環境をつくるとともに、自由に施設や地域を楽しむ仕組みができている。

今回の挑戦を通して、DXに取り組んでもお客様に対して冷たくなることはない、デジタルでも温かさを伝えることができると実感した。思った以上に小規模旅館でも柔らかいDXができたことから、未来の可能性を感じている。

今後は、他の旅館へ横展開し連携することで、由布院で自由度と地域性の高い観光を実現したい。

 

協栄工業株式会社

「社員が幸せに働ける会社をつくる」をビジョンに掲げる協栄工業株式会社。

衛生設備や空調設備などの建築設備の設計施工を行っている。従来、紙ベースでの管理が煩雑になっていたため、Excelのマクロを活用した工程管理システム「みまもりくん」を開発し業務の効率化を図ったが、PCが苦手な人や、膨大な業務に追われ「わかっていたけどやらずに放置していた」という別の問題が発生した。

そこで、「みまもりくん」にアラート機能を追加し、業務放置をゼロに。さらに、「みまもりくん」をクラウド化することで、現場からでもスマホやタブレットでデータ入力・工程確認・報告等ができるようにし、上司によるリアルタイムでの進捗確認や、担当者の直行直帰を可能とした。

今後は、「みまもりくん」をさらに改良し、このサービスを他の施工管理会社に提供していきたい。

また、当社は今回のDXの取り組みを通じて、下記のような変化が起きた。引き続き、協栄工業の意識をチェンジし、チャンスをつかんでいきたい。

 

株式会社スーパー細川

「毎日の健康をお届けし、長く暮らしやすいまちづくりへ」をビジョンに掲げる株式会社スーパー細川。

店舗で4~5万枚ほど発行しているお買い物カードを活用し、お客様の買い物データをスマートフォンに表示する「スマートレシート」の機能に、買い物データや運動データをAIが分析し、おすすめレシピの提案や運動のアドバイスをする「カロママプラス」の機能を連携させ、お客様の健康増進に役立ててもらう取り組みを進めている。

大きな成果は、お客様と店舗・取引先の意識の変革。アプリ導入を機に、お客様から健康関連食材の問い合わせ・要望が多く寄せられ、取引先からも当社で商品を扱ってほしいとのオーダーが増えた。これまでは売れなかった高価な商品も評判が良く、お客様の意識が変わってきていることを実感している。

さらにお客様へのアンケート結果より、カロママプラスを利用してから「商品・レシピの提案が役に立った」、「野菜を買う頻度が増えた」という回答は6割を超え、健康意識の変化が明確となった。今後も取り組みを継続し、下記のような生活者・自治体・小売/サービスの三方良しの未来を実現する。

 

株式会社高山活版社

「印刷を通じてデザイナーと“ともにつくる”会社」をビジョンに掲げる株式会社高山活版社。

近年、情報を伝える媒体が紙からデジタルへ変わってきたことで、印刷業はその役割を終えようとしている。

当社では、情報だけを伝える従来の印刷物だけでなく、作り手の想いも伝えられる印刷物を作るクリエイティブなものづくりへのシフトを目指している。

そこでデザイナーを自社工房に招き、色の見え方や、活版印刷の押し込み方などを相談しながら試し刷りをしたり、意見を交わしながら一緒にデザインをするように印刷するという新しいビジネスモデルへの変革に取り組んでいる。

具体的には、まずは新サービス開発。デザイナーとの協業にサービスニーズがあるか実証した。デザイナー5名と一緒に作品を制作。“ともにつくる”ことに対して、デザイナーからは高評価をいただくとともに、作品も多くの方に購入していただき、手ごたえを感じた。

次に、プロモーション戦略。作品に込めた想いを文章と写真で丁寧に紹介し魅力を伝える「ストーリーサイト」の公開や、デザイナーやクリエイター350名にニュースレーターの送付、SNSでの制作事例公開の結果、「イベントに参加したい」、「工場見学したい」との問い合わせもあり、Webサイトの訪問者数は以前と比べ50%増加した。

デジタルの力でデザイナーと繋がり、工場見学などリアルで魅力を発信する仕組みを構築。2023年9月には、ブラッシュアップしたサイトの公開およびオープンハウス(工場見学)を実施する。

 

株式会社中津急行

「ドライバーが事故を起こさない環境づくり」をビジョンに掲げる株式会社中津急行。

ドライバーへのヒアリングを通じて、「賃金をもっと上げてほしい」という声に着目した。売上増ではなく無駄な経費の削減という観点で、利益の4分の1程度を占めていた事故に伴う修繕費や弁済費等の支出を削減することで、ドライバーの賃金に還元する。

そこで、ドライバーの安全意識を向上する行動にインセンティブを付与することで、ドライバーの自主的な取り組みを促し、事故を未然に防止する安全意識向上サイクルの仕組みを構築。ツールとして、「NK」アプリを開発した。

アプリ導入後に各ドライバーへアンケートを実施。安全運転を10段階で自己評価してもらったところ、平均スコアが1段階向上した。ポイント制度の導入によって、ドライバーの安全意識の向上を可視化することができた。

さらに、運転技術の高いドライバーの視線の動きをデータ化する眼鏡型アイトラッキング端末を用いて、無事故運転の安全確認方法を可視化。オンデマンドで学習できる動画教材を開発し視聴してもらうことで、運行スコアが約16%向上した。

今回の取り組みを通じて、事務職とドライバーの交流が増えるなど、社内コミュニケーションの変革が起きた。今後は、当社の取り組みを横展開し、業界全体の安全意識を向上、そして運送業界は2割労働時間が長く、2割賃金が安い、そんなネガティブな常識を打ち壊す、その第一歩にもつなげていきたい。

 

株式会社ナガヨシ

「10年後の未来にあかりを灯す」をビジョンに掲げる株式会社ナガヨシ。

介護が必要になった高齢者の方が自宅で生活できるように、車椅子や介護ベッド等をレンタルする事業を行っている。

孤独死やそれに伴う高齢者向けの賃貸住宅不足を解消し、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活ができる社会をつくるため、IoT機器を活用した見守りサービスを展開。

ソリューションは、トイレの電球のオンオフ情報を遠隔で家族に知らせる「みまもるライト」と、薬の接種状況を通知する「お薬カレンダー」を採用。安否確認だけでなく、排泄回数や服薬状況のデータを分析し、家族や関係者と共有することで、介護の質向上にも寄与する。

まずは、これらを既存の住宅に取り付けて高齢者の安否を家族や介護職の方が確認可能にした。利用者の家族からは、トイレに間に合わなかったり、転倒していたことに気づけて助かったとの声をいただいており、効果を感じている。

また、空き家が多く困っている大家さんから物件を借り上げて、これらのIoT機器を設置して転貸するサービスも考えている。

県内の医療・介護職にニーズ調査をした結果、約7割が「ニーズがある」と回答した。

配食、身元保証、買い物、家具・家電などの関係で様々な事業者と提携を進め、ようやくこの4月から賃貸を開始できる見込み。

人生最後の時を「住み慣れた地域で自立した生活を送る」ために、引き続きサポートを実施していく。

 

浪井丸天水産

「養殖業の付加価値を高め元気な産業にしたい」をビジョンに掲げる浪井丸天水産。

エサにビール酵母を与えて育てた豊後ハマチ「若武者」の海外進出を目指す。

水産養殖業は、価格決定権がない、人手不足、後継者不足と多くの問題を抱えており、業務もアナログが多く、そこから抜け出すことが難しいのが現状。そんな状況を打破し、養殖業を元気な産業にするため、「出荷体制の向上」、「プロモーション」、「ホームページ」のDX3本柱を構築した。

まず出荷体制の向上では、Bluetooth計量器や船上でも利用可能なタブレットを導入し、デジタル化を推進。その結果、日々の業務を1人当たり40分削減した。さらに、業務効率化によって、社員のモチベーション向上にも寄与している。

続いてプロモーションでは、Instagramのストーリーズを活用し、認定店の募集やイベント、取扱店舗を紹介した。結果、新規取扱店4件を含め、国内外から計27件の問い合わせが寄せられ、手応えを感じている。また、県内の「若武者」取扱認定店とのタイアップ動画を制作し、商品の魅力を広く発信している。

最後に、プロモーションの軸となるホームページを制作し、今後の注文拡大につなげている。

デジタルを駆使する若者の発想と、熟練の技術や知恵を持った先輩の感性を融合し、4年後の海外展開に向けて進化を続ける。

 

有限会社やせうま本舗田口菓子舗

「大分の文化“豊後銘菓やせうま”を日常に」をビジョンに掲げる有限会社やせうま本舗田口菓子舗。

大分県の郷土料理「やせうま」を、一口サイズにアレンジしたお菓子を販売する。

大分県のお土産品としての認知度は高かったが、それに依存した需要がコロナで激減したことを背景に、「お土産品」から「日用品」への変革を目指す。

変革に向けて、県内・県外でそれぞれ取り組みを実施した。

まず県内では、日常的に食べてもらうため人気料理人とのコラボレーションを実施。料理人によるアレンジスイーツの開発やレシピの作成・公開をした結果、50食限定販売に対して100食の予約を受け、予想以上の反響を得た。また、アレンジスイーツのフォトコンテストも実施し、これらの取り組みはテレビや新聞にも取り上げられた。

続いて県外では、認知拡大を目指しデジタルマーケティングを活用。以下の成果を達成した。

(ECサイトの改善)月間売上が2~5倍に向上

(リスティング広告)キーワード検索で上位表示

(プレゼントキャンペーン)Instagramのフォロワーが844人→1,682人に増加

(アンバサダー・インフルエンサー)「審査員太鼓判」評価の獲得

(プレスリリース)ニュース検索で1番目に表示

これまでは、日常の業務に追われてDXに取り組むといっても動き出せない部分があったが、今回の取り組みを通じて、やりたいと思っていたことを形にすることができ、今後も“動こうと思えるようになった”。当社のDXはこれがスタートライン、来年度以降も挑戦を継続していく。

 

本事業は、初年度の取り組みとして、多くの県内事業者の方々にご参加いただき、ここまで走ってまいりました。

事業の中で、参加している皆様が本気で自社の未来を考え、チームで一歩踏み出す姿はとても力強く輝いていました。

DXの取り組みは決して難しいものではありません。しかし、楽なものでもありません。

ただ、必ず皆様の未来を切り開く、頼もしい武器となります。そして、それを伴走してくれるパートナーはここにいます。

本事業はまだまだ始まったばかりです。次年度ご参加をお考えの皆様、事業の名にあるように、ともに大分を沸かせてまいりましょう。