湧く沸くDXおおいた過去採択者が語る! 「DXで描く新時代へのナビゲート!大分発DX変革の共創会議」を1/23(火)開催しました。

「湧く沸くDXおおいた」は、人口減少が深刻視される中でも大分県内の事業者が持続的に成長し続けることを目的に、DXのモデルケースを創出する伴走型プロジェクトです。先日、「DXで描く新時代へのナビゲート!大分発DX変革の共創会議」と題して、昨年度採択企業である二社にご登壇頂き、対談イベントを開催いたしました。

ここではその内容を一部抜粋して公開いたします。詳しくは、添付動画をご覧ください!

今回スピーカーとしてご登壇頂いたのは、株式会社ありたや 取締役の野口高志さんと、協栄工業株式会社 代表取締役の大賀豊文さんです。野口さんは、創業108年をむかえる住設商社の次期社長。大賀さんは管工事分野で県内シェア No.1 総合設備業の代表取締役です。


■DX化の背景と取組み

  • ライバル企業の出現に焦り。株式会社ありたやとしての強みを十分に発揮させるために、年間300時間の作業時間を削減・・!

はじめに、なぜDX化に取り組むことになったのか?その背景と、具体的にどのようなことを推進されているのかをお話いただきました。

株式会社ありたや(以下、ありたや)は、創業108年の老舗企業。特に地元に根付いたビジネスを強みにしてきましたが、首都圏の大手商社がローカルにも出店し始めたことが危機感の醸成と競争のきっかけとなったそうです。生存競争に勝って生き残っていくためには、提案力や供給力、配送体制といった強みを生かしていく必要があり、DX化に踏み切ったそうです。

取り組んだのは作業効率化の鍵「RPA」です。RPAつまり、ロボティックプロセスオートメーションとは、PC上でのあらゆる作業を自動化する技術です。PRAを使用すると、ブラウザで情報を調べたり、ログイン操作をしたりといった日々の繰り返し作業をプログラム設定することで、自動化してくれる優れものです。導入効果は絶大で、以前は7工程かかっていた業務が、なんと3〜4工程省略可能になりました。この変革によりなんと年間300時間も業務時間を削減できる見込みです!!

しかしDX化を進めていく上で予期せぬ障害があり、一時的に作業を人の手に戻す必要が出てしまいました。ですが、ありたやは決して諦めることなく、システム改善に向けての取り組みを再開されている姿勢に、未来をより良くしようとする意欲を感じました。

  • 迫る2024年問題、残業上限規制に対応するための残業時間を大幅にカット!若手の成長意欲にも寄与

給排水衛生設備や空気調和設備などの企画・設計・施工管理・保守を一気通貫で担う協栄工業株式会社(以下、協栄工業)は、来る2024年の残業上限規制を機に、これまでのアナログ業務を見直すプロジェクトをスタートさせました。

これまでは、工事現場の進捗をホワイトボードで更新したり、日報を紙で提出したりと、昔ながらの方法が取られていたそう。当プログラムを通じて、これらの業務を見事デジタル化することに成功しました!今では日報も、進捗管理もスマホ一つで管理、ホワイトボードに書いていた行動予定表もデジタルで一覧表示するようになり、管理者も現場作業員も離れた場所でもデータを把握できるようになりました。ただ一方で、日報の作業などをただ単純化させると若手の成長機会を奪ってしまうことになるので、そうはならないような設計に配慮したとのことでした。

このように協栄工業は、DX化は社員の成長と業務効率化のバランスが大切だということを伝えておりました。


■DX化の要とは

~DX化で最も重要なのは、どんなあり姿でありたいのか【ビジョン】を決め言語化すること~

ありたやのビジョンは「お客様に最高の住空間を提供すること」と話していた野口さん。この背景には、建設業界の縦割り思考があったようです。この考え方では、住宅設備に関する十分な知識を持ち提案することが難しくなってしまう。そこでありたやでは、業界の通説に縛られず、顧客にとって本当に快適な住環境を提供すべく、レベルの底上げを目指していると話してくれました。

また、野口さんはビジョンの大切さを改めて実感した経験をお話してくれました。「快適な住まいを提供する」という顧客満足を追求するビジョンを掲げ励んでいますが、RPA導入に失敗するなどのつまずきもあったそうです。しかしそれでも野口さんたちは目的意識を失わず、しっかりと失敗から学び、顧客満足への道を模索し続けたと言います。その過程で、失敗をただのミスと捉えずに改善につなげることの重要性を実感したそうです。つまり、困難に直面してもビジョンから逸れず、それに立ち返り事を進めることが本当に重要だと強調されていました。

うまくいかなかった時だからこそ、ビジョンをしっかりと心に留め、次の一歩を踏み出さなくてはいけないということを伝えておりました。


■ビジョンを”ただのビジョン”で終わらせないコツ

協栄工業の大賀さんは、ビジョンを持つことと同じくらい重要なのは、そのビジョンを口に出し、チーム全体で共有することだと強調されました。言葉に出すことで自分にも社員にもコミットメントを生み、やらざるを得ない状況をつくり出すそうです。DXは難しいと社内では感じられているようですが、自社で開発を進め、幾度も挫折を経験しながらも、言ったからには逃げずに責任を持って取り組む姿勢が、後年のデジタル化に向かい合う強さを育てたとのことでした。

このお話から、ビジョンは従業員が自ら声に出し、共有していくプロセスがとても大事だということが伝わってきます。


■DX化がもたらしたのは生産性向上だけではなく、組織変革

協栄工業は、DX化に取り組み始めた当初は「生産性を上げたい」という期待だけでスタートしたそうですが、進めるうちに意外な展開があったと教えてくれた大賀さん。具体的には、生産性向上委員会を立ち上げて業務改善に取り組んだことから、社員が主体的に動き出す新たな気づきがあったそうです。最初は月に1、2件の提案でしたが、今では毎週のように社員が率先して業務フローの改善案を持ち寄るようになり、トップへの意見が積極的に出るようになったそうです。これこそが、DXを進めてきて良かったと感じる瞬間であると感慨深く語られていました。

このお話を通し、社員一人ひとりが、企業を良くしたいという共通の願い〈ビジョン〉を持ち行動し続けたことが、組織としても変化を遂げたという証拠だと思いました。社員の声に耳を傾け、大事だと思う提案はどんなに小さなものでもシステムに織り込んでいくことの重要性が読み取れます。日々の努力とコミュニケーションが、変革する組織を作っていく上で不可欠な要素なのですね。


■まとめ

今回の大賀さんと野口さんのお話から、「湧く沸くDXおおいた」プロジェクトにおける大分県内の事業者様の取り組みは、変化に対する前向きな姿勢と、それを支える地道な努力から成果が生み出されていることがとてもよく伝わってきました。デジタル化の過程での挑戦や学びが、単なる作業の効率化を超え、組織内の創造性と主体性を促進する新たな文化を築いていく鍵となっているようです。この対話の場で共有された知見は何よりも、地域に根ざした事業者様が自らの環境に合わせてDXに取り組む際の参考になるものであり、私たちもその一端を担えたことを心から嬉しく思います。今後とも、さまざまな場所でのDX化の取り組みが各々のビジョンに照らし合わせて進められ、それぞれの個性が光る地域経済の発展へと繋がっていくことが楽しみです。